ジョイント 指板 フレット

ジョイント(継ぎ手)方式

(1)ネックとヘッドのジョイント

スカーフジョイント スランテッドジョイント 斜め接ぎ
 多くのイタリア式マンドリンはヘッドとネック(竿)が2ピースに分かれていてこれを接いでいる。
 ナポリ型マンドリンの伝統的構造はヘッドとネックを斜めに接いでいる方式でスカーフジョイント(Scarf joint)と呼ばれ、廉価なギターにも利用されている方式。スカーフジョイントの加工は容易で材料の歩留まり(効率)がよいものの衝撃に弱い。そのままでは強度が無いので、家具などではネジやボルトで補強されているがマンドリンなどの楽器では接着だけとなっている。
 この方式の楽器は転倒時にヘッドから折れやすい。また、ジョイント付近からネックそり、指板の浮きが起きやすい。

図の上は元の板

その下(中)はカッティングの状態

下はヘッドとネックのスカーフジョイントと集成材ヒールの構成

(Stewart-MacDonaldのNeck Construction Tips and Techniquesより)

ジョイントのない一本竿

 一本竿はヘッドとネックが一体になっている構造で接ぎが無いため堅牢。木目の方向に縦と横がある。縦の方はクォーターソーンと呼ばれ、音質は堅く強く明るい。横方向はフラットソーンと呼び、よりまろやかな、暖かいサウンドの傾向となる。

ラウンド(ボール)バックマンドリンでは田鎖賢彦氏のエンベルガーマンドリン、吉本煌貴氏の No15や落合のSSユーロモデルなどが1本竿を採用している。ヴァイオリンの場合は横板とクロスする方向でネックブロックが接着されている。また、ギブソンなどのフラットマンドリンは1本竿となっている。(図は田鎖マンドリン製作所、エンベルガーマンドリン製作工程より)

その他のジョイント Vジョイント フィンガージョイント

 ギターではVジョイントやフィンガージョイントという方式もある。Vジョイントはバロックギターでは一般的な方法で、モダンギターではドイツのハウザーやロマニノスがこの方式を採用している。
 フィンガージョイントは組接ぎともいう。両手の指を組み合わせたような方式で、接合面積を多く取る事が出来、強固な接合方式といえる。
最近は金属加工と同様にNC工作機械により複雑なジョイントでも精度高く作ることが出来る

(2)ネックとボディのジョイント(ネックのかかと部分)

インテグラルヒールジョイント(Integral-heel Joins)

 マンドリンのボディとネックは通常第10フレットで接続されている。接続方式はインテグラル・ヒールジョイントとウェッジジョイントの2タイプが代表的である。
 インテグラルヒールジョイントは伝統的なイタリアのボールバックマンドリンに見られる。通常ボディ(ボール)はネックとヒールが構築された後に取り付けられる。経済性からヒール部分がボディとのジョイントを支えているヒール保護ベースと2つの部分に分かれているののもあるが一般的には馬蹄形のような形状のワンピースとなっている。落合マンドリンなどはこの形式で構築されている。(図はMandolin Luthierより)

 くさび形ジョイント Wedged Joins 蟻型接ぎ

 この形式はドイツの近代的なマンドリンを始め、多くのマンドリンで採用されている方式で、ボディに内蔵されたくさび形のベースブロックにくさび形のヒールのあるネックをはめ込む。
その他、オールドマンドリンでは右図のようなルーズネックジョイント(簡易型)といわれるジョイント方式もあった。

指板 フィンガーボード

 指板の材料としては黒檀(エボニー)が一般的で縞黒檀やローズウッドを使うこともある。下記はマンドリン用の各種指板材料 左からココボロ (cocobolo)、インディアンローズウッド(パリサンダー Palisander)、マッカーサーエボニー(縞黒檀)、マダガスカルローズウッド、パーフェロー(Pau Ferro)、西アフリカ黒檀、ジリコテ(Ziricote シャム柿)
( LUTHIERS MERCAMTILE INTERNATIONALより)

 黒檀は硬くて重いので何十年使ってもすり減りはほとんど見られないが、その分乾燥によるフレットのバリやヒビ割れは出やすい。音質はサスティン豊かで輪郭のハッキリしたサウンドが出力される。ローズウッドは黒檀と比較するとサスティンは少なく軟らかい印象の音色。乾燥によるフレットのバリやヒビ割れといったトラブルは少ないが何十年も使ったものは徐々にすり減って表面が凹む。左手の爪は良く切っておくこと。
 フラットバックのマンドリンはアーチトップ(丸みを帯びたかまぼこ形)とフラットトップ(平ら)の2種類があるが、ラウンド(ボール)バックマンドリンはフラットになっている。なお、宮野の指板はわずかに曲面となっている。
 指板用黒檀はマンドリン・ウクレレ用として12" x 2" x 1/4"(304.8mm x 50.8mm x 6.35mm)のサイズで流通している。西アフリカの黒檀が代表的で2種類のグレードに分けられる。指板の厚さは6.35mm(1/4インチ)が一般的。

  指板用黒檀の仕上げは図のような種類がある。
 No finishは木地のまま、FD dyeはFD染色により黒くする、FFOA oilは指板用のオイル仕上げ、FAW Ax waxはアックスワックスと呼ばれる指板専用の仕上げ。
(同じくLUTHIERS MERCAMTILE INTERNATIONALより)

フレット

 フレットも指板を通して弦の振動を伝える役割を持っているため、形状や質量、材質等よって音色に変化が出る。

フレットの材質
 材料は洋白が多いがステンレスもある。洋白は銅、ニッケル、亜鉛の合金で一般には「洋銀」とか「ニッケルシルバー」あるいは「ジャーマンシルバー」などと呼ばれている。食器などに使われる洋白の素材構成は銅62%、ニッケル14%、亜鉛24%だが、楽器のフレット用には柔らかすぎるのでバネ性を増したニッケル含有量17~18%のものが使われている。洋白は銀白色の光沢があり、加工性、耐食性に優れていて感触は柔らかい。ステンレスは耐久性が高く光沢が長持ちする。音の立ち上がりが良く、サスティンが優れている。摩擦が少ないのでギターではヴィブラーとをかけやすい。逆に感触は堅く、高音がぎらつく。フレットの耐久性が高い分、弦の摩耗が早い、また硬い材質のために加工が困難などがデメリットといえる。このためFCGRステンレスフレットといって、やや柔らかなステンレス素材のフレットが開発されている。カラーチェのクラシコA SPやアンナマリアはステンレスフレットを使っている。洋白やステンレス以外に真鍮製や牛骨、象牙のフレットもある。オールドの楽器やギターでガット弦を使う場合はステンレスや洋白では硬すぎて弦が切れやすい。

フレット形状

 フレットの形状はT型(キノコ型)または板状のバー型がある。マンドリン用のフレットサイズはT型の場合で頭部幅(W)1.3mm~1.8mm高さ(H)0.6~0.8mm、埋め込み深さ(D)1.4~1.5mm。バーフレットの場合は厚さ0.8mm~1.3mm深さ1,5mm~3.0mm程度。
 弦とフレットの接触面積は楽器の音量、レスポンス、音の厚み、音の鋭さ、運指感覚、サスティン、フレットノイズなどに影響する。長期の使用で上端が摩耗すると音がビリつく。バーフレットで上部が平面に近い場合は押弦の際にバーと弦の間に隙間が生じてビリつく事になりやすい。特に3弦4弦のワウンド弦で出やすい。バーフレットはT型に対して加工に手間がかかり、最近は使われることが少ない。

温湿度による影響
 湿度による指板の膨張・収縮に対し、フレットは金属で出来ているので変化は少ない。このため湿度変化によってフレットの両端が出入りし、出る場合はバリと呼ばれる。湿度変化などによりフレットが浮いて来ることもある。両端から浮いて来る事が多く、1弦をきちんと押さえても音が出にくく、つまった感じになる場合はフレット浮きの可能性がある。

塗装 へ)