塗装

塗料の種類

  楽器の保護のために塗装は必要だが、塗装が厚いほど楽器の振動を抑制する。塗膜が厚い順にラッカー、ポリエステル、ポリウレタン、カシュー、乾性油(リンシードオイル等)、シェラックなどとなる。マンドリンの表面塗装は主にラッカーが使われている。

 木材は塗装によって色が変わる。これをぬれ色と言うが、ラッカー系の揮発性塗料はぬれ色が小さく、木材の特徴をそのまま生かす事が出来る。スプルースなど松科の樹種を白木仕上げにするにはアクリルラッカーが適している。またラッカー塗装は扱いやすいことと艶がいいことでも広く好まれている。ただし塗膜が最も厚いラッカー塗装では気候の変化による木材の収縮に塗装の収縮が間に合わず、「ウェザーチェック」と呼ばれるヒビ割れが入ることがある。(図)そのため、日本の気候に対応するにはウレタン塗装の方が良いともいわれエレキギターではポリウレタン塗装が増えている。ただし、ポリウレタン塗装は光に反応して黄変する。

つやありとつや消し

 塗料には「つやあり」と「つや消し」がある。つやありの事をグロス、つや消しの事をつやなしやマット仕上げとも言う。 つや消しはフラットベースというつや消し剤を塗料に混ぜてつやを無くしている。100%のつや消しから、半つや、ほんの10%、20%ツヤの塗料までいろいろある。

 つや消しは落ち着いた雰囲気で上品に見えるが、つやありよりも耐久性が少し落ち、汚れがつきやすい。また、ネックが滑りやすいのでポジション移動は楽だが、表板がつや消しだとブリッジが移動しやすい。また、つやありの場合、細かい傷は超微粒子のコンパウンドで取れるがつや消し,半艶には使えない。ギターではポリウレタンの塗装をナイロンたわしやスチールウールを使ってつや消しにする人もいるようだ。

 松島マンドリンMS-1bis、宮野マンドリンのMシリーズ、エンジェルマンドリンなどがつや消し塗装となっている。

シェラック塗装

 シェラック(shellac)は東南アジアの亜熱帯地域に多く生息する「ラックカイガラムシ」と呼ばれる虫の分泌物からできている。この分泌物を精製した後、アルコールに溶かして利用する。昔からヴァイオリンやギターの塗装として使われてきたシェラック塗装はポリウレタンの10分の1(20~30ミクロン)程度と塗膜を極めて薄く仕上げることが出来、木材の振動を妨げず良い音が得られる。(画像はフレーク状のシェラック)

 シェラックは精製の度合いにより、いろいろなグレードがある。形態としては採れたままのスティック状、粉砕または板状に成形したものなど。精製過程は不純物を濾過、脱蠟、脱色、漂白などだが、楽器に使用する場合は精製するごとに音質は低下すると言われている。シェラックは楽器用としてはメタノールを10%含んだエタノール(メチルスピリッツ)に溶解することが多い。ただし溶解した塗料の長期保存は出来ない。

 シェラックはなにか特殊な材料と思われるが、アナログ(LP・SP)レコード盤、チョコボールや医薬品(糖衣錠)のコーティング、ヘアマニキュアなどの化粧品等、多くの日常製品に使われている。

シェラックの塗装方法

 伝統的な塗装方法はフレンチポリッシュと呼ばれる方法で、シェラック溶液をタンポに染み込ませて、擦り込むように塗っては乾かすことを何度も繰り返す。この方法の仕上がりは鏡面仕上げだが、つや消しも可能。シェラックは乾燥するまで時間がかかり、2週間程度は必要とされる。また、塗膜が薄いため傷つきやすく、酸には強いが熱には弱い。水分、アルコールなどにも触れないようにし、演奏や練習などで使用した後には柔らかい布で表面を拭くなど注意が必要である。最近またシェラック塗装が増えてきている。たとえば野口のArtistシリーズやカラーチェなど。カラーチェマンドリンでは16bisやクラシコA、Cは表面がシェラック塗装、それ以外の部分はラッカー塗装となっている。最近は全面シェラックのものもあるようだ。

  ヴァイオリンの塗装ではこのシェラックと樹液を固めたマスティックを主体にジネプロ、ベンゾエ、エレミといったニスを配合して適度な硬度にし、着色剤のドラゴンブラッドで色を付け、アルコールに溶いて使っている。配合の比率は長年の試行錯誤によるもので通常は公開されない。(ナルガッキ等参照)

(ピックと弦に関してはマンドリン音楽のピックと弦を参照)