マンドリン合奏の基本的な楽器編成と人員

オーケストラや雅楽の編成

 古典的なオーケストラでの2管編成の基本的人員は第一ヴァイオリン16名、第2ヴァイオリン14名、ヴィオラ12名、チェロ10名、コントラバス8名と なっている。近代的なオーケストラでは第一ヴァイオリン12名、第2ヴァイオリン12名、ヴィオラ8名、チェロ8名、コントラバス6名という編成も多い。 これらの弦楽器に加えて木管楽器のフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットと、金管楽器のトランペット、トロンボーン、ホルンなどが各2本、更に打 楽器としてティンパニ、大太鼓、シンバルなどが使用される。
 小編成ではヴァイオリン2、ヴィオラ、ヴィオロンチェロの弦楽四重奏が多くを占め、ヴァイオリン、ヴィオロンチェロ、ピアノのピアノトリオの曲も多い。
 世界最古のオーケストラとも言われる日本の雅楽は打楽器(打物)、弦楽器(弾物)、管楽器(吹物)であり、3つの管楽器、2つの絃楽器、3つの打楽器、「三管両絃三鼓」の16名構成となっている。弦楽器は琵琶、箏、和琴といずれも撥弦楽器である。

 

 聖光学院管弦楽団のサイトには雅楽の事が詳しく載っている。
 そこには「西洋音楽では普通、打楽器奏者は打楽器しか受け持ちません。雅楽の場合、打ちもの専門の奏者はおらず、鞨鼓は楽人たちの中の一の者、太鼓はニの者、鉦鼓は三の者が担当したそうです。つまり打楽器は、管楽器などの経験も豊富で上手な者しか打てなかった。もし演奏に何か問題があれば、鞨鼓奏者は腹を切るくらいの覚悟で臨んでいたといいますから、大変な重責だった」と、ある。

日本のマンドリン合奏の編成

  日本のマンドリンアンサンブルの場合はラウンド(ボール)バック型クラシックマンドリンを採用した第一マンドリン、第二マンドリン、マンドラ(マンドラ・テノーレ)、ギターの4部編成が主であり、ヨーロッパの「古典四重奏」がベースになっている。作曲された過去の作品もこの編成が最も多いのではないか。編成人員は4名から30名程度であり、大型の合奏団体ではこれにマンドロンチェロ、およびコントラバスが追加される。また、打楽器やフルート、クラリネットなどの管楽器が加わることもあるが、当初から管楽器の入っている作曲や常駐メンバーとしている団体は少ない。マンドリン族でのマンドラ(マンドラ・テノーレ)の役割はレギュラーオーケストラのヴィオラの役割よりも大きく、ヴィオロンチェロに近い。 

欧米のマンドリン合奏の編成

  1880年代のイタリアにおけるマンドリンアンサンブルの編成はマンドリン、マンドラテノーレ(オクターブマンドリン)、ギターまたはマンドロンチェロの組み合わせがあり、一方、弦楽四重奏と同様のマンドリン、マンドラコントラルト、マンドチェロの組み合わせがあった。このアンサンブル形式は「ロマンチックカルテット」と呼ばれていた。なお、ヨーロッパで最もポピュラーなのはマンドリン、マンドラテノーレ(オクターブマンドリン)、ギターの組み合わせで「古典四重奏」とよばれた。「ロマンチックカルテット」の形式はアメリカのマンドリンアンサンブルに取り上げられている。なお、ファルボは一時マンドラコントラルトを用いた4部合奏の曲を書いている。アメリカではマンドラというとヴィオラと同じCGDAの調弦であるマンドラコントラルトのことを指すのはこういった歴史が背景にあると思われる。日本でも東京マンドリンアンサンブル(竹内郁子主宰)やアマデイマンドリンアンサンブルはギターのない編成となっている。

パート別編成人員

欧米のマンドリン合奏編成人員

 マンドリンアンサンブル・オーケストラでは編成人員に定まったものはないが、実際にどのような編成になっているかを見てみる。

 武井守成の「マンドリンオーケストラ研究」の例ではイタリア・カラーチェの編成はMn1-15 Mn2-10 マンドラテノーレ8 マンドロンチェロ4 ギター8 キタローネ2 他にピアノやオーボエが入り50名。米国のオデルによる編成はMn1-12 Mn2-10 マンドラコントラルト7 マンドロンチェロ5 ギター6 マンドバス2 バンジョー4 などで50名となっている。
 久松祥三氏の昭和57年度成城大学文芸学部芸術学科卒業論文「マンドリンオーケストラの発達と現状」に1920年頃の編成例が載っている。取り上げた合奏の所属国は伊3、日2、米2、独1、仏1の9団体であり、上記の団体が入っている可能性もある。アメリカのマンドリン合奏にはバンジョーが入っている。また打楽器や管楽器の入った編成もあるがこれらを除いてみる。
 平均は36.6人でマンドリンが17.7人、マンドラ6.1人、マンドロンチェロ3.3人、ギター6.9人、マンドローネ2.6人である。百分率で比較するとマンドリン48.3%、マンドラ16.7%、マンドロンチェロ9.1%、ギター18.8%、マンドローネ7.1%となった。なお、久松氏のデータでは米国の合奏にもギターが入っている。

日本のマンドリン合奏編成人員
 2014年の大編成の例から鈴木静一展、バッカス、秦野、コンコルディア、プレクトラムソサエティの5団体を見てみた。平均62.2人でマンドリンが23.8人、マンドラ12.6人、マンドロンチェロ8.8人、ギター12.0人、マンドローネ1.0人、コントラバス4.0人である。百分率にするとマンドリン38.3%、マンドラ20.3%、マンドロンチェロ14.1%、ギター19.3%、マンドローネ1.6%、コントラバス6.4%となった。資料は少ないが、マンドラ、マンドロンチェロ、コントラバスの増加していることが分かる。

ギターの地位
   現在の一般的なマンドリンアンサンブル・オーケストラでは弦6部でギターとコントラバスが入っている。一般に、ギターはガット弦(ナイロン弦)のクラシックギターが用いられる。マンドリン族のスチール弦と合わせるため、スチール弦のアコースティックギターを使っていた団体もあるが、マンドリン合奏ではやはり違和感があり、表現力も少ない。ピックを使わないため爪を痛めることも多く、現在ではナイロン弦のクラシックギターにとってかわっている。

 マンドリン奏者の竹内郁子が主催する東京マンドリンアンサンブルではギタロンや胡弓を入れた小編成の演奏も行っているがアンサンブルでは2010年ごろからギターを入れていない。またアマデイマンドリンアンサンブルもギターのない編成となっていたが2010年頃からはギターもいれている。

 日本でのマンドリン合奏におけるギターの地位はやや不安定となっているようだ。

演奏人員と演奏スタイル

  演奏はオーケストラスタイル、室内楽スタイル、ソロスタイルと3つのスタイルに分けられる。オーケストラスタイルでは個人個人は合奏の中に溶け込み、室内楽スタイルでは各自の個性を保ちながら他の人たちと同等に演奏を分かち合う。ソリストの場合は完全な自己主張であり、個人の技倆や自分の演奏スタイルを音楽的に発揮する。

 ソロスタイルは一人の独奏、2人は独奏と伴奏、コンツェルトでのソリストもソロスタイルである。室内楽スタイルは3人から20名程度まで、通常は指揮者を置かずに演奏する。それ以上になると指揮者の指示と個性に合わせ、いわばオーケストラが指揮者の楽器のような状態といえる。

 ヴォールテンペリーレンではメンバーが13人を超えてから指揮者を置いているが、室内楽スタイル(アンサンブル)での演奏を理想としている。2018年現在の構成はマンドリン(1st、2nd)8名、マンドラ2名、マンドロンチェロ2名、ギター4名だが、これにコントラバスの常駐メンバーが1名参加してもらえれば人員構成としては完成形と思っている。指揮者を含めて合計18名である。オーケストラの曲では制約が大きいが、この編成で一般的なマンドリン合奏曲やポピュラーな曲、小型のオーケストラの曲などに幅広く対応できる。

米国、ブラジル、ロシアの撥弦楽器合奏

米国のマンドリン合奏

 米国のマンドリンアンサンブル・オーケストラで用いられる代表的な楽器はフラットマンドリン1st、2nd、マンドラコントラルト、マンドチェロの組み合わせで4人から30名程度の弦楽合奏となっている。マンドバスの加わることもある。

 このマンドリン合奏は米国でクラシックマンドリンオーケストラと呼ばれている。

 左図はギブソンのフラットマンドリン系オーケストラ楽器

ブラジルのバンドリン合奏

ブラジルのショーロ音楽で基本的な編成はヘジョナウと呼ばれ、カバキーニョ(4弦の小型ギター)、バンドリン(フラットマンドリン)、フルートなどのメロディー楽器、パンディロ(タンバリンのような打楽器)、6弦または7弦ギター(セッチ・コルダス)となっている。これらの組み合わせの大きな合奏を弦楽オーケストラと呼んでいる。

ロシアのバラライカ合奏

 ロシアの民族楽器は胴が三角のバラライカと丸いドムラの2系統があり、基本的に3弦の楽器である。ドムラはピッコロ、プリマ、アルト、バスの4種類、バラライカはプリマ、セコンダ、アルト、バス、コントラバスの5種類がある。
バラライカオーケストラではバラライカ、ドムラ、グースリ(チターに似た楽器)ロシア式アコーディオンのバヤン、打楽器などを組み合わせている。赤軍合唱団がバラライカオーケストラと競演していることが知られている。

また、バラライカオーケストラはロシア国内だけだけではなく、米国やカナダ、オーストラリア、日本にも存在する。

写真は1921年の米国のマンドリンオーケストラ、ブラジルのバンドリンオーケストラ、ロシアのバラライカオーケストラ