低音楽器を含んだ大型のマンドリン合奏

低音楽器の拡大

 マンドロンチェロは低音を出すためには一般に性能が低く、特に4弦のC線はフォルテには耐えられない楽器が多い。C線の役割を果たせないとするとマンドラの低音部と同じ事となり、マンドロンチェロを編成する意味が薄れる。このため、より大型のマンドローネを採用して低音部を強化している団体もある。従来マンドロンチェロはクラブ持ちの楽器が多く、楽譜も後から付け足したようなのが多かったのだが、最近は個人で持つ人も多くなり、楽器の性能も改良されて良くなってきている。今後、マンドロンチェロの重要性が増す可能性は高い。イタリアなどの作曲ではマンドローネの入っている編成も多い。

コントラバスの定席化
 コントラバスは擦弦楽器であるが、現在ではマンドリン合奏でも安定した地位を占めていて効果も高い。吹奏楽団でも演奏会にはコントラバスが定席を占めている。擦弦楽器を嫌って大型のギターといえるキタローネを採用している団体もあるが、楽器そのものが少ないこと、性能が低いことから一般的ではない。また一部ではあるがプライムギターより4度低いバスギターや5度低いギタロンを入れている団体もある。ギタロンはコントラバスのようにエンドピンがあり、立てて演奏する。大型のギターアンサンブルでは重要な位置を占めている。

米国のマンドリンアンサンブル・オーケストラではマンドバスという楽器を使っているところもある。コントラバスと同じ調弦の楽器の他、マンドリンの2オクターブ低いもの、マンドラコントラルトのオクターブ低い調弦のものもある。形態はなで肩のティアドロップ型とリーフ型があり、立てて使うのが一般的だが、横に抱いても演奏できるようだ。

管楽器の利用

 日本では1960年から70年代にかけて多くのマンドリン合奏の人員がいた頃に大編成で管楽器も使用した作曲や編曲があったが、80年代以降にマンドリン人口が減少したこともあり、あまり書かれなくなった。ドイツではツプフ・オーケストラと言われる小人員編成での演奏が多い。この編成ではマンドリン、マンドラ、ギター、コントラバスで演奏されるのが基本となっている。大編成の曲では打楽器や管楽器が追加されるが、定席としてメンバーに加わっている団体は少ない。

そのような状況から現在日本のマンドリン合奏ではマンドリン1、2部、マンドラ、ギターの4部編成が主体であり、大型の合奏ではこれにマンドロンチェロ、コントラバスの入った6部編成が標準となっている。管楽器の入ったマンドリンオーケストラの編成では定着した形のものはない。

大型のマンドリンオーケストラの対象曲目

 マンドリン合奏曲は20世紀初め頃の作曲が多いが、それらは4重奏から小型のアンサンブルのために書かれている。中野二郎が低音部を追加したり、吹奏楽曲から編曲された曲、1960年代から70年代に大型のマンドリンオーケストラ用に作曲された曲が大型のマンドリンオーケストラのレパートリーとなる。毎年演奏会を開催していると同じような選曲になるためレギュラーオーケストラ(クラシックの)曲を編曲して取り入れることが増える。このことに関しては賛否両論あるだろう。「最近のマンドリン合奏」で久松祥三氏や中野二郎が言うように自分たちが弾いて楽しむのであればいいのかもしれない。ただ、演奏会は作曲者、演奏者、聴衆で成り立っていることを基本に置きたい。
 江戸時代に華美な遊芸を「歌舞音曲」と呼び、祭り囃子は「笛太鼓」というが、マンドリンオーケストラにこれらが入らないのは寂しいと思う。マンドリン合奏はヴァイオリン族の弦楽合奏と似ている。
マンドリンオーケストラと称して管楽器や打楽器の入っていない合奏団体が多いが、マンドリン弦楽合奏のことを一般的にマンドリンオーケストラと呼んでいる。(写真はマンドリンオーケストラ コンコルディア第40回演奏会 2012年)