演奏速度と速度変化

 マンドリンでのトレモロは継続した音が出せるが、音楽の速度に合わせてトレモロの数及びトレモロの速度変化で対応しなければならない。これはトレモロの基本的な技術として習得すべき事である。練習を積んでいない奏者や経験の浅い指揮者では音楽の速度がその曲想から来る適切な早さに関わらず、トレモロで演奏し易い速度になってしまうことがある。テンポの遅いワルツの演奏を聴くことがあるが、これはトレモロのやりやすい速度になっていて、ワルツの曲としての速度を無視している。3拍子のワルツを滑らかに演奏するのはマンドリン族では難しい。なお、演奏会でのワルツはバレエの劇場での踊りを伴う演奏よりも多少速いことが多い。またウィンナワルツは通常2拍目を若干早めに入ることで躍動感をあらわしている。ウィンナワルツは1拍子だと思った方がよい。

通常の3拍子とウィンナワルツ

通常のワルツは1,2,3泊が均等だが、ウィンナワルツは1拍目がやや短くその分3拍目がやや長くなっている。2拍目と3拍目は同じ程度という人もいる。またアクセントは1拍目には置かず2拍目、または2,3拍目となる。

速い演奏と走る演奏

 テンポの速い曲でも落ち着いて聞こえる演奏。逆にそれほど速いテンポではないのに走って聞こえることもある。“走る”とは練習時のテンポより速い場合、演奏中にだんだん速くなってしまう場合をいう。テンポが速いのは単にテンポを上げたということだが、走って聞こえるのは演奏に自信や余裕がない時、演奏にのめり込んで、興奮してしまった場合、周りの音を聞いてないで自分だけで演奏してしまっている場合、などがあげられる。これはスピードをコントロール出来ていない状態で、具体的には小節の終わりの音が短く、極端なときは16分音符などが省略され、息継ぎや止めなどの音節やフレーズの表現ができていない状態となっている。
そうならないためには確実に弾けることを前提として、メトロノームの裏に合わせる、歌いながら演奏する、などの練習方法をとると良い。

 実際の演奏においては「楽譜を弾く」のではなく「音楽を表現する」気持ちが大切だ。

速度変化

 ラレンタンド、リタルダンド、アッチェランドなどは速度が変わる指示記号だが、急速な速度変化をトレモロでスムーズに行うには音符あたりのトレモロ回数がスムーズに変化しなければいけない。生演奏で正確な一定のテンポを保持することはラヴェルのボレロのように特殊な音楽といえる。昔の軽音楽ではテンポの揺れの少ないのが多いが、マンドリンのオリジナル曲やクラシックの曲はテンポの揺れ(アゴーギク)のあるのが普通であり、音楽的に自然な速度変化を表現することが求められる。マンドリンアンサンブルではメトロノームを使ったり“イチとおニイとお”などと拍子を取りながら練習することがある。実際オデルの教則本初級(全音楽譜日本語版)ではそういった拍子の取り方が書かれている。古典的な楽曲の場合に音符の長さを正しく弾く確認の意味としては必要だが、音楽表現はその先の問題であり、テンポとは音楽の流れであることを知らないといけない。

 フェルマータの前ではリタルダンドやテヌートのかかることが多い。またアクチェルのあとではリタルダンドがかかり、元の速さに戻るか、そのまま新たなテンポのフレーズに切り替わる。

 

ラレンタンドとリタルダンド

 ラレンタンドは“だんだんゆるやかに、音量は落とさない”であり、rit+緊張を緩めるであるといわれる。目標に向かって遅くするといった意志を持っている。
リタルダンドは“だんだん遅く、テンポだけ落とす”意味だが、気持ちとしては遅くなってしまう、消えていくといった意味を含んでいる。
リテヌート:直ちに遅く、アッチェレランド:だんだん速く、音量も次第に増す意味もある。アラルガンド:拡張する、はRit+crescの意味だが、だんだんゆるやかに緊張は高める。スモルツァンド:Rit+dim スレンタンド:速度を緩めて スラルガンド:延長して、次第に幅広く メノ モッソ:メノは「より少なく」 モッソは「動く」なので、あまり速くなく、といったように速度変化や強弱変化に関する音楽用語は多くある。作者の意図を演奏に表現することが大切である。