音の強弱 デュナーミク[Dynamics](英)[Dynamik](独)

 マンドリン族やギターの音量は管楽器や擦弦楽器と比較して小さく、マンドリンオーケストラの音量もレギュラーオーケストラ(管弦楽)やウィンドオーケストラ(吹奏楽)よりも格段に小さいため、ダイナミックの範囲も狭い。管楽器や打楽器を含む曲の場合はマンドリン族との音量バランスをよく考えないと音楽を壊してしまうことがある。
 撥弦楽器であるマンドリン族で無理に大きな音を出そうとすると楽音よりも雑音が増えてしまう。


 強弱記号では通常、ppからffまであり、記号が一つ変化するごとに音量は倍に変化すると言われているが、実際には音楽表現上の「強い」「弱い」ということで、絶対的な音量を表わしている訳ではない。

 初心者でpと書かれている部分は常に一定に弱く弾き、f部分は一定の強さで奏すると思っている人がいる。pと書かれていてもその部分のフレーズや曲の範囲が相対的に弱いのであって、メロディーであればその中でも当然抑揚がある。伴奏ではメロディパートとの関連でどのように抑揚をつけるかを決める。fの場合も同様である。fとフレーズの最初に書かれていてその後にクレッシェンドがあるのはfから更にffに持っていくこともあるが、フレーズの始めは弱く入りその後にfにしていくのが通常だろう。

 

 ストコフスキーは音の大きさを物理的に表現した。それによれば
 ppp=20フォン pp=40 フォン p=55 フォン 

 mf=65 フォン f=75 フォン ff=85 フォン fff=95 フォン
となっている。

 実際にはオーケストラの編成、音の高さや個人の感じ方、演奏会場などの条件で異なる。また、fとffは単に音量の違いだけではなく、緊張感の違いも含まれていると考えられる。fからffは緊張感が増大するが同様にpからppについても緊張感は増大する。

 また、mpは「やや弱く」mfは「やや強く」だが、比較の元になる「普通(Natural)」があるはずだ。「普通の音の強さ」とは曲目や曲の位置によっても異なり、演奏者にゆだねられていると思われる。

希にppp、ppppやfff、ffffなどの表示もあるが、マンドリン演奏においては強弱の少ない演奏が多いようだ。

 ちなみにチャイコフスキー の交響曲第6番ロ短調「悲愴」の第4楽章にはトロンボーンのppppが、第一楽章にはファゴットにpppppが出てくる。ただし、これを演奏するのはあまりにも難しいと、バスクラリネットで代用することが多いようだ。

 強弱表現でppなど弱音を十分に出来ない奏者がいる。これは一般にピックの保持に力の入りすぎていることが原因となっている。最弱音を表現するにはピックを落とす直前程度まで軽く持たなければいけない。

 逆にフォルテを綺麗に出すには練習が必要だ。単に力任せに弾くとアタック音の雑音は増えるが大きな音は出ない。ヴァイオリンの場合だが「巨匠」と呼ばれるような人の近くで聞いた人は等しく「音が大きい」という。

 通常はピックをしっかり握り、ピックの位置はややスルポンティチェロでピックを深く当て、ボディーを響かせるように弾く。

 

カペレッティ「マンドリン賛歌フローラ」の始めの部分

 メッツァカーポの「VISION」24小節目はマンドラがf だがその他のパートはppになっている。これを表示通りの音量差で演奏するとマンドラが出過ぎてバランスが崩れる。ここの部分は全体がppのなかでマンドラの動きが分かるように強調して欲しいとの作者の意図だと思われる。
 この曲はこのようなパートによる強弱の極端な差が何カ所か記されているが、同様の意味合いで演奏するのが良いだろう。強弱記号が1つ上がるのが2倍の音量であるならば、この場合ppとfは32倍の音量となり、不自然になる。記載通りの強弱で演奏をするべきではなく作者の意図を汲んで、実際に聴いてみて音量をコントロールする。

 

 合奏練習の時に指揮者は極端に「2ndはそこのところf3っつだな」などということがある。練習の時の強弱をそのまま印刷されているのではないかと思われる楽譜もまれにあり、音楽的に不自然でないか判断する必要がある。

クレッシェンド、デクレッシェンド(ディミヌエンド)

 強弱の変化にクレッシェンド、デクレッシェンド(ディミヌエンド)がある。クレッシェンドは<、デクレッシェンドは>の記号で表わすが、記号のある最初の音符で音量が段差的に変わり、すぐに大きく、または小さくなる傾向の演奏が多いようだ。ディミヌエンドを1小節間で行うのであれば、最初の1拍目の音量は前の音量と同じ程度からスタートし、直線的な変化ではなく、ゆったり変化させる感覚がちょうど良い。急激に音量を小さくするのは通常subito Pと書かれる。

劇的なクレシェンドは後半に急激に強くする、ドイツ古典的なクレッシェンドは直線的に強くするというように同じクレッシェンドでも曲によって使い分けるべきだろう。
齋藤秀夫はクレッシェンドを直線型、若草山型、富士山型、複式火山型(2段型)などと区分している。

 良く訓練されていないアンサンブルではクレッシェンドは若草山型、デクレッシェンドは富士山型と、いずれも早すぎる場合が多い。直線的なクレッシェンド、デクレッシェンドでもクレッシェンドは富士山型、デクレッシェンドは若草山型のつもりで演奏するのが良い。楽譜に記号が書かれていると、そこから音量変化をしてしまうのが、その理由だが、変化の初めは通常、前の音量と同じレベルからスタートする。

 ピッキングの場合に音は減衰するだけでクレッシェンドは不可能であるが、クレッシェンドを考える事により次の音の緊張感が増え、クレッシェンドを感じることが出来る。また、曲の最後がディミヌエンドの場合に音が完全に無くなったとしても静かに指を離すかパッと離すかで曲のイメージは変わる。
 ピアノ演奏の指導をしている大竹道哉は“音のないところを感じさせる”“心の中の音と現実の音の関連を表現する”ことが大切だと言う。

デクレッシェンドとディミヌエンド

 デクレッシェンドとディミヌエンドはどちらも音をだんだん小さくするという指示だが、意味は若干違っている。
デクレッシェンドが単に“だんだん弱く”という意味なのに対し、ディミヌエンドは“弱くなってほしい。落ち着こう”という気持ちがプラスされる。弱くする終着がはっきりしている。

 2017年2月18日(土)のバッティストーニ指揮、東フィル、公募のアマチュア合唱団によるヴェルディ「レクイエム」は曲の始まりがPPP?で無音から徐々に音楽が始まり、全曲が終わる最後のデクレッシェンドは、消えた音が天に昇るような感覚で、時間で言えば1分くらい後に拍手が始まった。

アクセント

 全体的な強弱とは別にスフォルツァンド、アクセント、フォルテピアノといった音符の頭についている指示記号があるが、これらを使い分けることで演奏に変化が生まれる。多くのマンドリンアンサンブルの演奏が初めのアタアックの強いアクセントになっている。なお、ピッキングの場合にこれらの変化を付けることは困難で、トレモロの場合に限られる。

 基本的なアクセントのうち“>”は初めのアタックが強く、“sfz”は初めのアタックから多少遅れて最大の音量となり、“fp”では一定時間フォルテがありその後ピアノになる。マルカートは通常のアクセントより強く弾く。ゆっくり、かつ強弱の変化の少ないスフォルツァンドを”<>“と書かれることもあるが、表示方法はあまり一般的ではない。

フォーレのシシリエンヌ(Op.80,no.3)に出てくる sf は長くゆっくりしたスフォルツァンドで奏されることが多い。
 ピアノで作曲した楽曲の場合にはアクセントの差をどのように考慮していたか明確でない場合もあり得る。 “>” と “˄” の違いやsfz、sf、fzなどの違いをどのように表現するかは奏者の判断に任される。なおエレキギターでは「アタックタイム」で音の立ち上がりのコントロールが出来る。

 小学校で学んだ音楽では4拍子の1拍目は強く、3拍目が次に強い 強-弱-中強-弱 と教わっていた。確かに日本の歌のアクセントは始めに来ることは多いし、軍歌などはその通りだろう。しかし、ヨーロッパの音楽で始めにアクセントの来る曲は少ない。