ローラ序曲 Lola Piccola Sinfonia per Orchestra a Plettro イァサント・ラヴィトラーノ作曲

Hyacinthe Lavitorano/Giacinto Lavitrano

 ジャチント・ラヴィトラーノ(Giacinto  Lavitorano)は1875年イタリアのイスキア島フォリオに枢機卿の父ルイージと母フランシスの息子として生まれ、裕福な生活を送っていた。しかし2,300人が犠牲となった1883年の大地震によりイスキア島の経済は破壊され、主にイスキア島のサンタンジェロ港から、多くの人々が親しんでいたという仏領アルジェリアのストラ、ボーン(Bone現在のannabaアンナバ)、アルジェ、フィリップヴィルなどへ木製の帆船で移民となって移動した。この地震でラヴィトラーノの叔父が亡くなっている。兄弟は移り住んだボーンでテーラーショップを開設したが、ラヴィトラーノは音楽の勉強を続けるためフォリオに残り、ナポリのサン・ピエトロ・マジェッラ・コンサバトリーで和声学を学び、作曲に専念した。

 ラヴィトラーノの音楽は世界中で評価されているが、マンドリン音楽はとりわけ日本で好まれている。(写真と文はhttp://www.ischia.it/giacinto-lavitranoを参照)

イスキア島からアルジェリアのボーンへ

 フォリオでラヴィトラーノは同僚などとの意見の相違があり、ここでは音楽の幅を広げられないとして、家族のいるボーンに移動した。彼がアルジェリアに移動することを決めたとき、ソッコルソの広場から海に大きな石を投げ込み「イスキアには決して戻らない」と誓っている。Lavitranoはフランスに帰化し、名前もfrancese Hyacinthe(フランシーズ・イァサント)とした。この頃が彼にとって最も充実した時期といえる。しかし、彼はフォリオを忘れたわけではなく、イスキア島を去って7年後には悲しみの聖母に触発され、作曲した「Desolata(荒涼)」がフォリオの聖セバスチャン教会で受難の日に演奏されている。

ボーンでの活躍

 1900年にはイタリアの国王ヴィットリオ・エマヌエーレ3世に贈呈した曲が評価されている。その後、ボーンの聖オーガスティン大聖堂のオルガニストとなり、オルガンとピアノのための曲の他、主にギターとマンドリンの作曲に情熱を傾けた。作曲された作品はイタリアの音楽雑誌「L'Estudiantina」「コンサート」や外国の多数の出版物に掲載された。ヨーロッパへも頻繁に旅行した。アルジェリアにはサンサーンスが訪問し、そこでの彼との議論やスペイン、北イタリアへの旅行はラヴィトラーノの音楽や作曲の技術革新に大きな役割を果たした。また、フランス印象派の作曲家であるドビュッシー、サティ、ラヴェル、ディーリアスなどとも親交があった。 ラヴィトラーノの作品には異国情緒を感じる曲が多いが、彼は語学にも長け、フランス語、イタリア語、スペイン語、アラビア語に堪能であったこともその要因といえるだろう。

ローラと1848年ミュンヘンの反乱

 イル・マンドリーノから1902年9月に出版された「ローラ」は「レナータ」「」とともに初期の代表作となっている。
 題名の「ローラ」は本名マリア・ギルバート(Maria Dolores Eliza Rosanna Gilbert)、芸名ローラ・モンテス(Lola Montez)から来ている。彼女は1818年?アイルランドのリメリックにてダブリン出身の婦人帽子屋の母と英領東インド陸軍大尉だった父の間に生まれ、その後、ブルーの瞳と黒髪を持つ美女に成長した。ローラは若い士官や作曲家・ピアニストのフランツ.・リスト、共和主義者のデュジャリエなどと浮き名を流した。

ローラとルートヴィヒ1世

 1846年にバイエルン(現在のドイツ・バイエルン州)の首都ミュンヘンを訪れた彼女は第2代国王のルートヴィヒ1世(Ludwig Karl August)に取り入り、愛人となった。ローラはランツフェルト伯爵婦人という称号を受け、貴族として王宮に出入りするようになる。
1848年革命

 19世紀中頃のヨーロッパは保守反動の君主制国家に対する自由主義・ナショナリズムが台頭。各地で反乱が起こり、ウィーン体制が崩壊した時代であった。歴史的には1848年革命として知られている。序曲「ローラ」はローラが政治に口を出し、ジェスイット派の大学教授の解雇と大学封鎖に反発した市民が大学の開放とローラの国外追放を要求して暴徒化した1848年2月ミュンヘンの反乱を題材にしている。(画像はルートヴィヒ1世とローラ)ローラの考えは共和主義者のデュジャリエにより感化されている。

ローラ序曲の構成

 曲の導入部は民衆がローラの館に近づく足音のような3連符で始まる。反乱のテーマが流れ、曲想は次々に変化する。続いてローラのテーマが堂々と奏でられる。中間部はルートヴィヒ1世とローラの会話のようだ。その直後、反乱市民が館に近づき、ローラはここを脱出する決心を固める。迫り来る市民からローラは彼女に想いを寄せる学生に助けられ無事に脱出する。最後は反乱市民の勝利が高らかに鳴り響き、曲が締めくくられる。(知久幹夫)

演奏時間

 約 8分40秒

楽器編成

 弦6部