「VISION」(幻影)メッツァカーポ作曲

  日本名で「幻影」または「夢うつつ」として知られている「Vision」の楽譜はマンドリンアンサンブル及びハープとマンドリンの2重奏でフランスのJ. Rowies社から出版されている。表題にはブロイ公妃へのオマージュVISION「宗教的メロディー」と題されている。

 アングルの肖像画で有名なブロイ公妃ポーリーヌ・ド・ガラード・ド・ブラサック・ド・ベアルンは1825年に生まれる。1845年6月18日にオルレアン王朝派の政治家で歴史家のブロイ公(ジャック・ヴィクトール・アルベール・ド・ブロイ)と結婚した。1846年に長男のルイ・アルフォンス・ヴィクトールが生まれ、その後5男を授かった。

ショーモン城
 ブロイ公はフランスのロワールにあるショーモン城の付属庭園を観賞用庭園として造成を進め、家屋と教会はロワール川の河岸の高台に移された。最終的に2,500ヘクタールとなる大庭園でブロイ公妃は動物をこよなく愛し、庭園内にブロイ公妃の犬や猿たちの墓を18基集めた墓地を造らせた。それらの墓には、そこに眠っている動物たちのためにブロイ公妃が詠んだ詩が記されている。

ブロイ公妃の肖像画
 美しく心優しいブロイ公妃の記憶を永久にとどめるため28歳の時に肖像画がアングルによって描かれた。その後ブロイ公妃は結核を煩い、35才で亡くなってしまう。彼女のあとに残された夫ブロイ公は、あまりにも生き写しの彼女の肖像画を見るに堪えられず、カーテンの影に飾っていたという。

VISION(幻影)構成

  曲は公妃の死を悲しむような静かなメロディーに始まり、その後やや明るい曲想になるが、これは森の動物たちと戯れる公妃を思い浮かべているようだ。中間部はゆったりした部分だが、子供たちに囲まれ、短くも平和だった日々の追想だろう。その後、ギターのアルペジオに乗って悲しみのメロディーが再現されるが、最後は短い一生を終わった公妃の魂が救われるような静かだが明るい長調に転調されて終わる。
 作曲家メッツァカーポは20歳の頃からパリを拠点として家族で活躍しており、ブロイ公妃の短い生涯は身近に感じられたのではないだろうか。(知久幹夫)

演奏時間 約4分

  アングルの名作「ブロイ公妃」はニューヨーク・メトロポリタン美術館に飾られている。

(メッツァカーポについては「ボニータ」参照)