スルポンティチェロ(sul ponticello)、スルタスト(sul tasto)

 音色の表現としてはピックの位置を通常位置、指板の上(スルタスト s.t)、駒の近く(スルポンティチェロ s.p)で弾く方法があり、これらは曲のイメージに応じて使い分ける。
 通常位置は右手をテールプレートの上に置き、ピックがサウンドホールの下(駒寄り)あたりにある、それより駒寄りに弾く場合をスルポンティチェロ、逆にサウンドホールの上(指板寄り)あたりで弾くのをスルタストという。スルポンティチェロの場合は金属的な硬くて倍音の多い音となり、スルタストの場合は柔らかい音になる。マンドリンは擦弦楽器やギターに比較しても表現力が少ないので、このスルタストとスルポンティチェロを曲想によって使い分けるようにしたい。


 ソフトな表現の必要なフレーズではヴァイオリン属の楽器は開放弦を使わないで演奏するのが一般的に用いられる。マンドリン属もこれに習って開放弦を使わないように指示する指揮者も多い。ヴァイオリン属の場合に開放弦は駒で音程が決まり、押弦は指で決まるため、音質に差が大きい。マンドリン属の場合は押弦でもフレットによる音のため違いは少ない。開放弦を使わないハイポジションの場合は弦長が短くなることによる音質の違いとなる。弦長の短い音質はぼそぼそした音になりやすい。また、ハイポジションとなった場合にスルタストでピック位置を指板上に持って行くと運指とぶつかってしまう。スルタストとスルポンティチェロ、通常位置というのは音を出すときに押さえるフレットの位置によって実際には変わるもので、良い奏者は無意識に良い音の出る位置にピックの位置を移動しているものである。
 最近どの曲であっても指板の方向で弾く人が増えているようだ。ピックも柔らかいものを使い、ソフトな音を求めているのだろう。指板上で弾くと音のボリュームが出ないため、強弱のない大人しい演奏となってしまう。きれいな音を求める余り、ダイナミックも表現力もない音になってしまっては本来の音楽からは遠い演奏となる。

スタッカート、ピチカート、タッピング