レガート・ノンレガート奏法

 楽譜に書かれている「音符」は一音一音出す”通常の音符”(ノンレガート)と連続した”スラー”、また短めの”スタッカート”もあり、逆に、音をしっかり保つ”テヌート”や”フェルマータ”もある。”
 通常の音符(ノンレガート)”では次の音符との間に約1/8程度の隙間がある。たとえば4分音符は次の4分音符との間に32分休符があるとして演奏すると一音一音が区別して聞こえる。言い換えれば通常の四分音符は複付点八分音符と同様といえる。
 また、擦弦楽器や管楽器では単音でも音量の変化はあり、始めと終わりは音が無いので真ん中がやや山形となる。この山形(音の中央部のふくらみ)がやや多めの場合はフランス的、やや少なめはドイツ的といえ、非常に多いと演歌的になり、非常に少ないと表情が無くなり単調となる。マンドリンのトレモロ奏法ではこれを意識して取り込まないと単調な音楽となってしまう。

 ディナーミク音の強弱参照

演奏速度とトレモロ数
 トレモロでは、四分音符の場合でピックの上下音を8回発生するのが標準的なトレモロだが、ノンレガート奏法ではピックの上下8回を7回分に入れる。ノンレガートの続いている場合は8回を7回分に入れるのがいいが、スラーとスラーの隙間(フレージング)では6,7回で止める、また左の押弦を離すことで通常の四分音符となる。

 メロディの速さにトレモロのスピードが合っていない場合は4分音符がアップダウン3回半などとなるが、フレーズの初めをダウンで始めようと思うと音が抜けたり前のめりの演奏になる。

 少し早いスピードで、ピックの上下音が4回となる四分音符の場合は4回の上下を3.5回分に入れることで通常の音符(ノンレガート)になる。これ以上早い場合にトレモロではスラーと通常の音符の違いを表現するには左指の押弦と開放のタイミングが重要となる。1つの音符にアップダウンが一回だけのダブルノーツの場合は上下を均等にするとレガートとなるが、上下一回を早めに弾いて音符と音符の間を取るようにして一音一音を区分する。なお、ダブルノーツはトレモロではなく、ピッキングでもないとして嫌う人もいる。
ピッキングでのレガートとノンレガートの区分は左指を押弦したままか離すことで区分できる。

連続同音でのノンレガート
 同じ音の四分音符の連続音型が一音一音区別されずスラーになってしまっている演奏を聴くことがある。これは通常の音符を区切りのある音と認識していない極端な例である。逆にゆっくりした速度や2分音符の場合に32分休符または1/16程度の隙間となる。
左の指の押さえを離すことによってノンレガートが明確になるが、レガートの場合は左の指を押さえたままにする。弦が移る場合はクーレで奏するなど、音の隙間を空けないように注意する。

 米国バンジョー・マンドリン組合の第5回会合時にトレモロで一音一音区切る場合を「スラーとアクセントの組み合わせ」で表わすとしたが、現在ではスラー記号もアクセント記号もつけないことが多い。

スラー奏法

 スラーの場合は音符の一音一音を区切らずに連続して演奏する。スラーの表示は連続する音符をスラー記号でつなげる。スラーとスラーの間はノンレガート奏法と同様に四分音符で1/8程度の休みが入る。同じ音程の音が続いている場合ではスラーの記号となっていても実際はノンレガートとなる。弦の移動するパッセージやポジションが変わる場合に音と音の隙間が空きやすい。歌うようなメロディーでスラーの途中が滑らかにつながらないとギクシャクした音になってしまうので訓練と注意が必要だ。

  マンドリンの奏者は一般的に4分音符以上の音符はスラー記号の有無に係わらずレガートで弾く人が多い。ヴァイオリンの人の場合はスラー記号がないとほとんどノンレガートで弾く。ピアノや歌の人はスラーがなくてもレガートに歌ったりできる。バロック時代の楽譜にはスラーも強弱も書いていなかった。マンドリンの場合に適切なスラーを記入しておかないと息継ぎのない非人間的な演奏になりやすい。呼吸の合った演奏を心がけることが大切だ。

  また、スラーは通常スラーの始めが無音から始まりスラーの終わりで無音となるので、音量はスラーで繋がった音符(群)がレガートとして、真ん中がやや山形となる。明らかにピッキングで奏される8分音符や16分音譜にスラーの書かれている楽譜があるが、これはピッキングであってもスラーとして滑らかに弾くような指示となっている。
 16分音譜や8分音譜のピッキングで奏するパッセージでスラー記号の付いている場合は、スラーの間は押弦した指はなるべく離さず、スラーとスラーの間では押弦した指を離すことで表現する。

 アマデイの「メヌエットとガボット(MINUETTO e GAVOTTA)」で、ガボットのTRIO部分。(スラー記号は一部直している。)中野二郎はここの部分を次のように述べている「ガボッタのトリオに記されたレガートの八分音符はトレモロでなく打掬交互に用いて(ピックのアップダウンで)余韻を柔らかにつなぎ軽快に運びたい」

スラーとフレーズ

 10小節や16小節にもわたるスラーが書かれた楽譜がある。マンドリンのトレモロの場合にはそういった長いスラーも演奏可能だが、実際にはフレーズの意味として解釈した方が良い場合が多い。ベースのアルコで複数小節をつなげてスラー記号を書いてあるのは物理的に無理であり、これは明らかにフレーズの意味で書いてある。ただし、作曲者によっては実際に何小節にも渡る継続した音が必要で書いていることがある。例えばシベリウスのカレリア組曲第2楽章の57小節目から14小節間のタイとスラーが出てくる。その場合オーケストラでは各奏者のボーイングの返しが同時にならないようにして弾く。マンドリンの演奏ではスラーを無視したような楽譜の指示は適切なスラーに直すべきであり、ベースの演奏者に適切なボーイングが可能なスラーとして書くべきだろう。 スルポンティチェロ、スルタスト

カンニングブレス

 長いスラーの場合にコントラバスのボーイングの返しと同様に、管楽器では各個人が人と異なる場所で息継ぎをすることがある。これはカンニングブレスと呼んでいて、各個人のブレス位置を予め決めておく。

マンドリンの場合必要であれば長いフレーズも可能なのでカンニングブレスは必要ない。